Vol.3 疲労骨折について

疲労骨折の痛みは、最初は運動中だけに感じる軽い違和感から始まり、進行すると安静にしていても続く鈍い痛みへと変化していきます。通常の骨折のような激しい痛みではなく、じわじわと続く痛みが特徴です。特に足の甲やすね、股関節周囲に起こりやすく、押すと一点だけが痛む「圧痛」がサインになります。

この記事では、スポーツ整形外科の視点から疲労骨折で現れる痛みの特徴、部位ごとの症状の違い、他のケガとの見分け方、そして予防法について詳しく解説します。

疲労骨折の痛みはこう現れる

疲労骨折は、一度の強い衝撃ではなく、同じ動作の繰り返しによる負荷が蓄積して起こる骨折です。そのため、痛みの出方も通常の骨折とは大きく異なります。転倒や捻挫のような明確なきっかけがないまま、気づいたら痛みが続いているというケースが多いのが特徴です。

初期は運動時にだけズキッとする痛みが出る

疲労骨折の初期段階では、運動中や歩行時にだけ痛みを感じます。練習を始めると痛むけれど、休憩すると楽になるという状態です。

この段階では「筋肉痛かな」「少し疲れているだけかな」と見過ごされることがとても多いです。痛みの強さも軽度で、日常生活には支障がないため、そのまま運動を続けてしまう方が少なくありません。

初期の痛みは「運動するたびに同じ場所が痛む」という再現性があることがポイントです。毎回同じ部位に痛みが出る場合は、単なる筋肉痛ではない可能性を疑ってください。

進行すると安静時や夜間にも続く鈍い痛みになる

疲労骨折を放置して運動を続けると、痛みは徐々に悪化していきます。最初は運動中だけだった痛みが、運動後も残るようになり、やがて安静にしていても痛むようになります。

夜間や座っているときにもズキズキと痛みが続くようになった場合は、骨折が進行しているサインです。この段階では、歩くたびに痛みを感じたり、日常生活にも支障が出始めます。

痛みの性質も「鈍く重い痛み」「奥の方がジンジンする」といった表現になることが多く、表面的な痛みとは異なる不快感を伴います。

押すと痛む限局性の圧痛が特徴になる

疲労骨折の大きな特徴の一つが「圧痛」です。指で押すと、ピンポイントで「ここだけが痛い」という場所があります。

筋肉痛では広い範囲がぼんやりと痛むのに対し、疲労骨折では骨の上を押したときに限局した一点が強く痛みます。自分で患部を押してみて、指一本分くらいの狭い範囲に明確な痛みがある場合は、疲労骨折を疑う根拠になります。

この圧痛は進行するほど明確になり、軽く触れただけでも痛みを感じるようになることがあります。

腫れや熱感など痛み以外の症状も伴うことがある

疲労骨折では、痛み以外にも以下のような症状が現れることがあります。

  • 患部の軽い腫れ
  • 触ると温かい熱感
  • 皮膚のわずかな赤み

ただし、初期段階では見た目の変化がほとんどないことも多く、外見だけでは判断できません。腫れや熱感が明らかになってきた場合は、すでに骨折がある程度進行している可能性があります。

部位別にわかる疲労骨折のどんな痛み

疲労骨折は体のさまざまな部位に起こりますが、特に荷重負荷がかかりやすい部位に多く発生します。部位によって痛みの感じ方や特徴が異なるため、それぞれの違いを知っておくことが早期発見につながります。

部位 痛みの特徴 悪化する動作
足の甲(中足骨) 歩行時に響く鋭い痛み 踏み込み、つま先立ち
すね(脛骨) 内側に沿った持続的な痛み ランニング、ジャンプ
股関節(大腿骨頸部) 奥深くの鈍い痛み 片足立ち、歩行
足首周囲 体重をかけたときの痛み 着地動作、方向転換

足の疲労骨折は歩行で響く痛みが目立つ

足の甲に起こる中足骨の疲労骨折は、ランナーやダンサーに多く見られます。歩くたびに痛みが響き、特に踏み込む動作で強くなります。

初期は「なんとなく足の甲が痛い」という違和感程度ですが、進行すると歩行のたびにズキッとした痛みを感じるようになります。特に第2・第3中足骨に多いとされています。

つま先立ちがしづらい、靴を履くと圧迫されて痛いという症状があれば、中足骨の疲労骨折を疑いましょう。

脛骨や中足骨は歩行や走行で悪化する痛みが出る

すねの骨(脛骨)の疲労骨折は、長距離ランナーに非常に多いケガです。すねの内側に沿って痛みが出ることが多く、シンスプリントと症状が似ています。

シンスプリントとの違いは、痛みの範囲と圧痛の性質です。シンスプリントは広い範囲がズキズキと痛むのに対し、疲労骨折は押すと一点だけが明確に痛みます。また、疲労骨折は進行すると安静時にも痛みが続くようになります。

走行距離を急に増やした直後や、硬い路面での練習が続いた後に発症しやすい傾向があります。

大腿骨や股関節付近は深く鈍い痛みになることが多い

股関節周囲、特に大腿骨頸部の疲労骨折は、痛みの場所がわかりにくいのが特徴です。股関節の奥深くに鈍い痛みを感じたり、鼠径部(足の付け根)に痛みが広がることがあります。

この部位の疲労骨折は、見逃すと完全骨折に進行するリスクがあり、手術が必要になることもあります。片足立ちや歩行で股関節に違和感がある場合は、早めの受診が重要です。

恥骨や坐骨など骨盤周囲の疲労骨折では、開脚動作や脚を閉じる動作で痛みが誘発されることがあります。

手足の小さな骨は局所的で持続する痛みが出やすい

足首周囲の小さな骨や、手の骨にも疲労骨折は起こります。これらの部位では、限られた狭い範囲に持続する痛みが特徴です。

足首では、繰り返しのジャンプや着地動作が原因となることが多く、体重をかけたときに痛みが増します。手では、テニスやゴルフなど道具を握るスポーツで、特定の骨に繰り返し負荷がかかることで発症することがあります。

小さな骨の疲労骨折は、レントゲンで見つかりにくいことも多く、MRI検査で初めて診断されるケースも少なくありません。

疲労骨折の痛みと他の原因の見分け方と受診の目安

疲労骨折は、筋肉痛や捻挫など他のケガと症状が似ているため、自己判断が難しいことがあります。ここでは、痛みの特徴から疲労骨折を疑うポイントと、医療機関を受診すべきタイミングについて解説します。

筋肉痛や捻挫との痛みの出方の違いを確認する

疲労骨折と他のケガでは、痛みの出方に明確な違いがあります。以下の表で比較してみましょう。

項目 疲労骨折 筋肉痛 捻挫
きっかけ 明確なケガがない 激しい運動後 ひねった瞬間がある
痛みの範囲 一点に集中 広い範囲 関節周囲
圧痛 骨の上にピンポイント 筋肉全体 靭帯周囲
経過 徐々に悪化 数日で改善 腫れを伴い徐々に改善

特に「明確なケガの覚えがないのに痛みが続く」という点は、疲労骨折を疑う重要なポイントです。

痛みのタイミングと直近の負荷増加を照らし合わせる

疲労骨折を疑う際は、最近の運動量や生活パターンを振り返ることが大切です。以下のような状況があった場合は、疲労骨折の可能性が高まります。

  • 練習量や走行距離を急に増やした
  • 新しいトレーニングメニューを始めた
  • シューズを変えた直後
  • 硬い路面での練習が続いた
  • 長時間の立ち仕事や歩行が続いた

「負荷が増えた時期」と「痛みが出始めた時期」がおよそ一致していれば、疲労骨折を強く疑う根拠になります。

レントゲンやMRIなどの検査で確定診断が必要になる場合

疲労骨折の診断には、画像検査が重要な役割を果たします。ただし、初期の疲労骨折はレントゲンに写らないことが多いという特徴があります。

レントゲンで骨折線が見えるようになるのは、発症から2〜3週間経過してからのことが多いです。そのため、症状から疲労骨折が疑われる場合は、MRI検査が行われることがあります。MRIでは、骨の内部の炎症や初期の骨折を早期に発見できます。

「レントゲンで異常がないから大丈夫」とは限らないことを覚えておいてください。症状が続く場合は、追加の検査について医師に相談しましょう。

長引く、歩けない、圧痛が強いときは早めに受診する

以下のような症状がある場合は、早めに整形外科を受診することをお勧めします。

  • 1週間以上同じ場所の痛みが続いている
  • 押すと一点だけが強く痛む
  • 体重をかけると強い痛みが出る
  • 痛みで歩き方が変わっている(かばって歩く)
  • 安静にしていても痛みがある
  • 腫れや熱感が出てきた

疲労骨折は早期に発見して適切に安静を取れば、多くの場合は保存的治療(手術をしない治療)で治癒します。しかし、無理を続けて悪化すると、完全骨折に進行したり、治療期間が大幅に延びることがあります。

「様子を見よう」と思って放置せず、気になる症状があれば専門医に相談してください。私たちスポーツ整形外科の医師は、スポーツを続けながら治療する方法も含めて、一人ひとりに合った治療計画を提案します。

まとめ

疲労骨折の痛みは、最初は運動時だけの軽い違和感から始まり、放置すると安静時にも続く鈍い痛みへと進行します。押すと一点だけが痛む「圧痛」が特徴的なサインです。足の甲、すね、股関節周囲は特に起こりやすい部位であり、部位によって痛みの感じ方も異なります。

明確なケガの覚えがないのに同じ場所が痛み続ける場合は、疲労骨折を疑いましょう。痛みが1週間以上続く、歩くと痛い、押すと強く痛むといった症状があれば、早めに整形外科を受診してください。早期発見と適切な治療が、スポーツや日常生活への早期復帰につながります。

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